技能実習生の送り出し機関とは?役割や各国の認定数などを解説
外国人技能実習制度では「送り出し機関」が技能実習生になりたい候補を現地で集め、日本に送り出しをしています。
この記事では、技能実習において送り出し機関とはどういった役割があるのかなどについて解説をしていきます。
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送り出し機関とは
日本に外国技能実習生を送り出す団体や企業を「送り出し機関」と呼びます。送り出し機関はそれぞれの在留資格によって定義が異なり、外国人技能実習制度では以下のように定義がされています。
技能実習制度における送出機関は技能実習生になろうとする者からの技能実習に係る求職の申込みを適切に本邦の監理団体に取り次ぐことができる者として、規則第25条において定められている要件に適合する機関と定められています。
出典:JITCO
送り出し機関は現地で技能実習生になりたい候補者を集め、受け入れ企業の希望に合った人材を日本の監理団体に取り次ぎます。
監理団体型の技能実習の場合、必ず送り出し機関を通じて技能実習生を受け入れることになります。
技能実習における送り出し機関の役割
技能実習において、送り出し機関は以下の役割を担います。
①候補者の募集・選抜
②日本に出国する前の研修の実施
③出国の手続き
④技能実習中の対応
⑤帰国手続きのサポート
①候補者の募集・選抜
送り出し機関は技能実習を希望する候補者の募集を行い、日本の受入れ企業が求める人材を性別・年齢・学歴・性格などを踏まえて選抜します。また、技能実習生になるには技能実習法で定められた要件をクリアしなければならないため、要件を満たしているかどうかの判断をした上での人材の選抜も送り出し機関の重要な役割となっています。
②日本に出国する前の研修の実施
技能実習生の選抜が終わった後、送り出し機関は入国前研修と呼ばれる日本語や日本のルール・マナー、現場で必要な実技などを教える研修を実施します。技能実習生は約6か月間かけて日本での生活に必要なことを学んでいきます。
③出国の手続き
送り出し機関は技能実習生が日本に入国するための手続きを行う役割もあります。健康診断を実施し、結果を日本の監理団体に報告します。また、監理団体が在留資格の手続きを進め、在留資格認定証明書が交付された際には、監理団体から送られてきた在留資格認定証明書を元に日本に入国するためのビザ(査証)の申請手続きを行います。
また、パスポートの申請など、その他出国に関わる手続きのサポートを送り出し機関は行います。
④技能実習中の問い合わせ・トラブルの対応
技能実習生を日本に送り出したら送り出し機関の役割が終わりではなく、日本に滞在している間のサポートも行います。技能実習生がなんらかのトラブルに巻き込まれた時の対応や、日本での生活におけるメンタルケアなどのフォローをします。
⑤帰国手続きのサポート
技能実習が修了した際には、帰国に必要な手続きや、母国の家族への連絡など技能実習生の帰国のサポートを行います。また、帰国した後の再就職のフォローや払い過ぎた厚生年金の返金手続きなどもサポートします。
送り出し機関の認定要件
送り出し機関の認定要件は以下の通りです。
(1)所在する国の公的機関から推薦を受けていること
(2)技能実習の制度を理解している者のみを適切に選定して日本への送出しを行うこと
(3)技能実習生等から徴収する手数料その他の費用について基準を明確に定めて公表し、技能実習生等に明示して十分に理解をさせること
(4)技能実習修了者の帰国後の就職先のあっせんやその他必要な支援を行うこと
(5)法務大臣、厚生労働大臣、外国人技能実習機構からのフォローアップ調査への協力などの要請に応じること
(6)当該機関又はその役員が、過去5年以内に日本又は所在する国の法令に違反して、禁錮以上の刑又はこれに相当する外国の法令による刑に処せられていないこと。
(7)所在する国又は地域の法令に従って事業を行うこと
(8)保証金の徴収やその他の名目を問わず、技能実習生又はその家族等の金銭・その他の財産を管理しないこと
(9)技能実習に係る契約不履行について、違約金を定める契約や不当に金銭その他の財産の移転をする契約を締結しないこと
(10)技能実習生又はその家族等に対して(8)(9)の行為が行われていないことを技能実習生から確認すること
(11)過去5年以内に偽造・変造された文書の使用などを行っていないこと
(12)その他、技能実習の申込みを適切に日本の監理団体に取り次ぐために必要な能力を有すること
送り出し機関のある国
現在、送り出し機関がある国は以下の17か国です。(2022年7月現在)
インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、パキスタン、 バングラディッシュ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、ラオス、ペルー、ネパール、ブータン
これらの17か国のうち、二国間協定を結んでいるのは中国・ネパール・ペルーの3国を除いた14か国になります。
二国間協定とは
二国間協定は日本と送り出し国との間で締結している取り決めのことです。
技能実習制度においては、技能実習を適正かつ円滑に行うために連携を図ることを目的として、ルールなどを明確に定めた取り決めを送り出し国と締結しています。
各国の認定送り出し機関の数
各国の認定送り出し機関の数は以下の通りです。(2022年7月現在)
国名 | 二国間協力覚書に基づく認定送出機関数 |
---|---|
ベトナム | 502 |
インドネシア | 312 |
ミャンマー | 281 |
フィリピン | 271 |
中国 | 243(※旧制度のJITCO R/Dに基づく認定送出機関数) |
ネパール | 206(※旧制度のJITCO R/Dに基づく認定送出機関数) |
カンボジア | 98 |
スリランカ | 73 |
モンゴル | 68 |
タイ | 59 |
バングラデシュ | 54 |
インド | 33 |
ラオス | 20 |
ウズベキスタン | 8 |
パキスタン | 2 |
ペルー | ※確認中 |
送り出し機関の数はベトナムやインドネシア、ミャンマーなどアジア圏の国々が多く、実際に技能実習や特定技能で日本に来る外国人はベトナムを中心としたアジア圏の発展途上国が多くの割合を占めています。
※中国とネパールに関しては、2国間協定は未締結となっており、2017年以前の旧制度のJITCOとのR/Dに基づく認定送出機関の数を記載しています。また、ペルーの送出機関は確認中となっています。
送り出し機関の選び方
企業と人材とのより良いマッチングを実現するには、送り出し機関の選び方は重要となってきます。どんな送り出し機関を選んだら良いのか、選ぶ時のポイントをご紹介します。
政府認定の送り出し機関
送り出し機関には政府に認定されていないところもあり、そういった送り出し機関は高額の紹介料を技能実習生や企業に請求してくるなど、トラブルが発生する可能性があります。
政府に認定されていてルールに則った運営をしている送り出し機関を選ぶことが推奨されます。トラブルに巻き込まれないためにも、信頼性のある送り出し機関を選ぶことが重要です。
入国前研修と日本滞在中のフォローが十分か
技能実習生が日本に入国する前の入国前研修の実施は送り出し機関の役割となっています。入国前研修では日本語や日本の生活ルール、法律などの教育をするため、十分な教育がされているかどうかで配属後の業務にも支障が出てしまいます。
日本語が堪能な担当者がいるなど、十分な入国前研修が実施できるかもポイントとなります。また、技能実習生が入国後した後も、悩みなどのフォローをしっかりと行う管理体制があるかどうかも確認しておいた方が良いです。
適正な管理費かどうか
専門的な分野や規模など、送り出し機関によって監理団体が支払う必要がある管理費の額は様々です。二国間取り決めによって定められている管理費の相場がある場合は、相場と比較をして適正な管理費かどうかを確認するようにしましょう。
また、最近では送り出し機関が増えてきたことによる価格競争が起きており、管理費を相場よりも安く設定するところもあります。管理費が安い反面、技能実習生に対する教育水準が低かったり、サポートが不十分である可能性が高いため、安いという理由からで送り出し機関を選ばないように気を付けた方が良いです。
適切な管理費で十分なフォローがある送り出し機関を選んだ方が、後々のトラブル発生を防ぐことにつながります。
まとめ
以上、技能実習の送り出し機関についての解説をしてきました。
適切な人材を集め、日本に送り出す役割を担う送り出し機関は技能実習において重要となってきます。良い送り出し機関を選ぶためには、監理団体の選び方もポイントとなってきます。
監理団体によって提携している送り出し機関が違うため、信頼できる監理団体を選ぶことが受け入れ企業と人材のより良いマッチングにつながります。
その他、何か分からないことがあればお気軽にご相談ください。