日本の産業界の中でも、人手不足が一際深刻化を続けているホテル・旅館業では、人材が集まらない要因として、賃金が安いことや労働条件が悪いことなどが挙げられます。
離職率も高い業界として今後、業務管理の見直しが必要となっています。
そこで、本記事では、ホテル・旅館業の人手不足の現状やその原因、解消策として外国人採用について解説していきます。
ホテル業の人手不足の現状
コロナ禍の影響によって悪化していたホテル業界では、インバウンド再開により回復が期待されています。
一方、観光客の回復ペースに伴い、ホテルスタッフの人手不足が問題となり、サービス業の現場では手が回らない状況となっています。
アフターコロナのレジャー需要の高まりに、ホテル業界では十分なサービス対応ができない現状、外国人採用による人材確保やDX促進などが急務となっています。
データによるホテル業の人手不足
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査/2023年4 月」によるホテル業界の現状は、データは以下の通りとなっています。
ホテル・旅館業の人手不足は、正社員については、2023年に入ってから6ヶ月連続で業種別トップとなり、非正社員においては「飲食業」に次いで2番目に高い割合となっています。
- 正社員の人手不足の割合は【51.4%】
- 業種別では「旅館・ホテル」が【75.5%】
- 非正社員の人手不足の割合は【30.7%】
- 業種別では「旅館・ホテル」が「【78.0%】
画像参照元:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査/2023年4 月」
ホテル業の人手不足の原因
ホテル・旅館業で、なぜ人手不足が深刻化しているのか?その原因を解説していきます。
- 離職率が業界トップ
- 平均賃金より安い
- 労働条件が悪い
離職率が他の業界よりも高い
厚生労働省の調査「令和4年上半期雇用動向調査結果」によりますと、産業別で、入職者数は「宿泊業、飲食サービス業」が 990.0千人と最も多い数値となっています。
一方、離職者数については、「医療,福祉」「卸売業,小売業」に次いで、「宿泊業、飲食サービス業」が 728.6 千人となっています。
- 入職率では「宿泊業,飲食サービス業」が 20.3%と最も高い
- 離職率では「宿泊業,飲食サービス業」が 15.0%と最も高い
前年比から見ますと、「宿泊業、飲食サービス業」が 395.3 千人増加で、最も増加幅が高くなっています。
画像参照元:厚生労働省・令和4年上半期雇用動向調査結果の概要
給料が安い
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査結果の概況」によりますと、産業別で最も賃金が低いのが「宿泊業、飲食サービス業」で、257.4 千円となっています。
一般労働者の賃金は、男女計 311.8 千円/男性 342.0 千円/女性 258.9 千円となっており、「宿泊業、飲食サービス業」の賃金は平均以下となっています。
ホテル・旅館業では、一般の平均賃金よりも安く設定されているため、魅力のない業界として求人が集まらない要因となっています。
参照元:厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査結果の概況」
労働条件が悪い
ホテル・旅館業の勤務体制は、基本的に365日24時間稼働となっているため、従業員の負担が多くなっている傾向です。
具体的には、休日が取りにくいことや長時間シフトなどが当たり前となっているため、健康面に支障が起こるケースも多くなっています。
ホテル業務に長く勤務しているとワークライフバランスがとれない現状から、入職率や離職率に関わる問題の原因となっています。
ホテル業の人手不足解消策
ホテル・旅館業では、他の産業と比較しても深刻度が高く、早急に現状回避をして行く必要があります。
では、人手不足の解消策としてどんな方法があるのか?解説していきます。
- 労働環境の改善
- デジタル化の導入
- 外国人スタッフの採用
労働環境の改善
給与の見直し、長時間シフトや休日がとれない等、労働環境の改善を行い、ホテル・旅館業で働くスタッフのモチベーション向上に繋げて、離職率を減らす体制づくりが必要です。
また、女性スタッフに対しては、育児や産後の休暇、時短勤務などで、ワークライフバランスがとりやすい環境づくりを目指しましょう。
デジタル化の導入
人手不足のホテル・旅館業では、業務効率化を図るためにデジタル化の導入も進んでいます。
ホテル利用客の宿泊手続きをデジタル化することで従業員の業務負担が減るメリットがあります。
改善事例としては、フロント業務や客室への荷物運搬、ホテル内のレストランの配膳作業などに、ロボットを導入して対応しているホテルや、宿泊者カードの導入で顧客管理の効率化に繋がる等が挙げられます。
外国人スタッフの採用
ホテル・旅館業では、人材採用枠に外国人スタッフを募集する企業が増えています。
外国人スタッフを採用した場合は、訪日外国人観光客の接客に必要な多言語対応できる人材を確保できることや、職場の活性化に繋がるメリットがあります。
また、日本語を習得した若い労働力を確保できるので、多岐にわたるホテル業務に適した人材を採用することが期待できます。
ホテル業で外国人材を採用するポイント
ホテル・旅館業で外国人スタッフを採用する際は、従事する業務内容によって在留資格が違ってきますので、事前に確認しておきましょう。
在留資格 | 取得要件 | 従事できる業務 | 採用の注意点 |
---|---|---|---|
技・人・国 | ・大学(短大含む)を卒業 ・日本国内の専門学校を卒業 ・実務経験10年以上 | ・宣伝・広報 ・企画・マーケティング ・フロント・コンシェルジュ ・通訳・翻訳 ・営業/経理 ・エンジニア | ※単純作業は不可 |
特定活動46号 | ・日本の大学を卒業 ・日本語能力試験JLPTでN1以上または、BJTビジネス日本語能力テスト480点以上取得 | ・フロントスタッフ ・法人営業 ・販促・広報・マーケティング ・現場スタッフ | ※アルバイト・パートで採用不可 ※本業と兼用で単純作業も可 |
特定技能1号 | ・宿泊業技能測定試験合格 ・日本語能力試験N4以上合格 ・18歳以上で健康状態が良好 | ・フロント業務 ・企画・広報業務 ・接客・レストラン業務 ・単純作業 | ※宿泊分野特定技能協議会に加入 |
技能実習 | ・入国前の1ヶ月以上、かつ 160時間以上の事前講習を受講 | ・利用客の送迎作業 ・滞在中の接客作業 ・会場の準備・整備作業 ・料理・飲み物の提供作業 ・チェックイン・アウトの作業 ・利用客の安全確保と衛生管理 ・安全衛生業務 | ※監理団体との契約が必要 |
身分系 | ・就労制限がない | ・業務範囲に制限なし | ※身分系とは 永住者・永住者の配偶者等・日本人の配偶者等・定住者 |
留学生 家族滞在 | ・資格外活動許可の取得 ・労働時間28時間以内 | ・業務範囲に制限なし | ※風営法に関わる仕事は禁止 ※長期休暇中は週40時間可 |
ホテル・旅館で働く外国人を採用する際は、通訳・翻訳やその他専門知識を必要とする業務の場合は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」が良いでしょう。
ただし、ベッドメイクや清掃など単純作業には就くことができないので注意が必要です。
もし、単純作業で採用する場合は、「特定技能1号」または、本業務と単純作業を兼用で従事できる「特定活動46号」、または、業務範囲に制限のない「身分系ビザ」や「留学生・家族滞在」の採用も検討されると良いでしょう。
留学生アルバイトの場合は、日本語能力が高く、卒業後に就労ビザに変更することで正規雇用も可能になります。
なお、在留資格「留学生・家族滞在」は就労ビザではないため、「資格外活動許可」が認められた外国人であることを確認することが必要となります。
また、「技能実習」で採用する際は、監理団体との契約に基づいて技能実習制度の趣旨にそった働き方が必要となるため、従事できる業務範囲については細かく作業内容が決められています。
まとめ
ホテル・旅館業界では、人手不足の解消策として外国人スタッフの採用が急務となっています。
インバウンド需要に伴い、外国人スタッフの獲得競争が激しくなってきていますので、
採用活動を早めにスタートすることをおすすめします。
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